◇ コウモリの自作自演  平井孝雄



@ 頭の体操をおひとつ      H16.3.18 平井孝雄

 皆さん お元気ですか? 今回、私の趣味、詰将棋パズルに付き合ってくだ
さい。
 次の問題は「詰将棋パラダイス」誌、今年の3月号に載った私の作った問題
です。たった、7手ですから、皆さんも、取り組んでください。

    

 では、ヒントとしてご隠居さんと八ッアンの会話を紹介しましょう。
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八「オヤ? 王様が二つもありますね」
隠「これは、<双玉問題>とも言うんだが、それでも、1二の王様を詰めれば
  良いんだよ」
八「それなら、自分の王様は「金」の代わりなんですかね?」
隠「イヤ、それだけじゃないんだ。例えば、3二飛車成の一手詰と思うと、こ
  れは、大いなる勘違いなんだヨ」
八「ナゼ? <合駒>も利かず、逃げ場所もなく、相手の王様は詰んでるジャン」
隠「若ぶって"ジャン"かね。ソレ、飛車が動いたため、相手の馬が、こちらの
  王様を直射しているだろ。これを<逆王手>と言うんだが・・・・」
八「アッ、そうか。3三の飛車は動けないんだ。 待てよ。では、馬筋をそら
  して、4二の王様を4一に動かし、7二の飛車で開き王手ならどうだ」
隠「なるほど。八ツアンにしては、上出来だよ。6三の銀で7二の飛車を外して
  も今度は、3二飛車成として、王様が馬筋にあたらないので、オシマイと
  言うわけなんだな」
八「なんのこった。逆王手さえ注意すればいいんだ。 アレッ、れだと3手詰
  みだよ、ご隠居さん。さっき、7手詰みとか言ってなかったっけ? 」
隠「よく気が付いたね、八ツアン。実は、初手4一玉の時、敵は5二銀打ちと
  逆王手するんだ」
八「アレレ、銀打ちですかい、この合い駒の銀は、どこから出てきたんです?」
隠「オッと、詰将棋では、現在使っていない残り駒は、全部合い駒として使え
  るんだよ」
八「ナンだか、ダマされたみたいだ。エエィ、こんな銀は、同飛車と取っ払えば
  いいんだ」
隠「オヤ。顔を真っ赤にして、猪突猛進だ。縁台将棋のクセが出ましたね。こ
  の飛車は、5二同銀として、又、逆王手ですヨ。 ナニ? この銀を王様
  で外すって。そんな手で遊んでちゃいけませんな。 詰将棋は王手の連続
  でないとダメなんだよ。八ツアン」
八「ウーム。 そうだ! 持ち駒に香車があったな。今度はこれを使って・・・・」
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 八ツアンは、隠居の前で考えています。将棋のたしなみのあるご隠居さん
(貴方のことですよ! )も一緒に考えてください。
 解答は、3月31日にこの欄で。


A パズル(詰将棋)解答        H16.3.31 平井孝雄
 皆さん如何でしたか? 骨が折れたって。そうですね。相手の王様だけでな
く、自分の王様にも気を回さないといけませんからね。
「解 答」は、
1四香打、同馬、5一玉、7二銀、3二飛成、同馬、2四桂まで7手詰み。

    

 どうもよく分からない。都合のいいように詰めてるって? では、又、ご隠
居さんと、八ツアンに、ご登場願いましょう。
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八「数えてみると、最初の王手が十二通りもあって、どれも詰みそうで、詰ま
  なくって、ヒドイ目に遭いましたヨ。コッチの王様を動かして逆王手にな
  らない開き王手は、5一しかないと分かったんですが、その先が・・・・。
  エッ、 初手は、1四香打ち? しかし、1四香に1三歩と合駒されると、
  同香成、同桂で、どうやっても捕まらないんですよ」
隠「ハハァ− 八ツアン、慌てて合駒を香車で取ったんだね。それじやぁ、金
  輪際、詰まないよ。この合駒には、大駒捨てで、1三同角成と取るんだ」
八「合駒を角を成って取るって? おんなじコトじゃないですか? 1三同桂
  でも、同馬と応じられても・・・・」
隠「フッフッフ、相変わらず早トチリだね。1三同馬なら、ホラ、2三飛成だ」
八「アレ? ご隠居さん、2三同馬と取られますよ」
隠「ドッコイ。1四の香車が相手玉に利いているので1三の馬は動けないんだ」
八「な、なぁーるほど! では、1三同馬でなく、同桂なら?」
隠「今度は、角がどいたので3一が空き、ここへ王様が入って開き王手。7二
  の飛車を銀で外しても、3二飛車成りで、<駒余り>の詰みなんだよ」
八「アレッ、3一にも逆王手が利かないんだ!! それで2手目、1四同馬の
  一手か! でも、初手1四香打ちでなく、5一玉と開き王手をしてから、
  1四香打ち、同馬でも同じこってすね? ご隠居さん」
隠「それで詰めば、<手順前後>でこの詰将棋はキズもんだよ。先に5一玉は、
  7二銀のあと、1四香打ちとした時、今度こそ1三歩と合駒されて詰まな
  いんだ。1三同角成り、同桂で・・・・」
八「ウーム コッチの王様がアサッテにおり、さっきみたいに、3一に行きた
  くても、行けないんだ。 ところで、ご隠居さん。5手目、2四桂と打ち、
  同馬と取らせて馬筋を外し、3二飛成りでも、詰んでるジャン」
隠「オヤ、又”ジャン”かい。ソレァ、それこそ<九仞の功を一簣に欠く>と
  いうヤツで、見事なハマリだよ、八ツアン。2四の馬が遠く5一に利いて
  逆王手。文字通り最後の一手で”オジャン”になってしまうのでご用心!」
八「フーッ。 たった7手と言っても、一筋縄では行かないもんだな。今度、
  指し将棋で分の悪い熊さんを、この問題でギャフンと言わせてやろう」
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 ゴチャゴチャしたパズル(詰将棋)談義で、失礼いたしました。


B  改作談義−補足に代えて−        H16.4.1 平井孝雄
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八「大変だ! コウモリのご隠居さん。あの問題を睨んでいたら、コチラの1
  五桂がなくても詰むんですよ! 」
隠「騒々しいね、八ツアン。コウモリは、余計だよ。何かと思えば改作ですか。
  畳の水練から、一挙に荒海に飛び込むなんて。マ、その意気や良しか。そ
  れで、どうやって詰めるんだね? 」
八「初手から、1五香打ち、1四歩中合い、1三角成り、同馬、2四桂打ち、
  同馬、3一玉、7二銀、3二飛成り、1三玉、2二龍まで11手詰で、キ
  レイに詰んでますよ。3手目、中合いの駒を取らないのが自慢なんです」
隠「5手目、2四桂捨てで、3一の馬の利きを外すのは面白いんだが、八ツア
  ン自慢の2手目、歩の<中合い>は、同香と取っても詰んでしまうよ」
八「それは、詰まない筈ですがね、1四同馬で、どうです? 」
隠「今度は、5一玉の開き王手は無効だが、取った歩を1三に打って、同桂、
  2二角成り、同玉、3一飛成り以下15手で詰むんだよ」
八「なんかムリヤリ詰めてるようですね。アァ、これが、ご隠居さんの言って
  た<余詰>とか言うヤツですかい? 折角考えたのに、オクラ入りか・・
  ・・グスン」
隠「<余詰>なんて言葉を、良く覚えていたね、八ツアン。ところが、これは、
  2手目1四歩合いが、まずいんで、1四桂合いでなくっちゃ」
八「アレッ、 さっき見たいに1四同香と取ると? 」
隠「今度は、取った桂馬はアタマが丸いんで、1三に打てず<不詰>になり、
  一応、これで、<完全作>となるかな」
八「なるほど、合い駒にも気を使わなきゃならないんだ。サッキの余詰みたい
  な手は、ナンて言うんでしたっけ? 」
隠「これは、<変化別詰>と言って、解答する時に注意が肝心。尤も、八ツアン
  みたいに、作った本人が、間違えることもあるんだがね」
八「ウヘッ。 ご隠居さん、みんなの前で、ソンナコト言いっこなしですよ。
  ついでと言ってはナンですが、初めの図で、6一の歩を除いて、6三の銀
  をここに持ってくれば、形がもっとスッキリしそうなんですが、どんなもん
  ですかね? も一つ、3四の歩も外して・・・・」
隠「6一銀かい、そこんとこはムズカシイね。形を取るか、初手5一玉の<紛れ>
  を取るかだが、これは作者の感性でどちらでも良いんじゃないかな。だけど、
  調子に乗って3四の歩まで除いちゃいけませんね。 この歩がないと、直
  接、1四香打ち、同馬で、2二角成り、同玉、3四桂打ち以下15手の余
  詰となるんだ。マァ、3四の歩を残して、11手詰と言ってもいいだろうが」
八「しかし、類似作とか、言われないですかね?」
隠「手順も違うし、カラチが似てるだけだから、姉妹局ということころかな」

    

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八ツアン 目出度く一局誕生。皆さんも姉妹局に挑戦してみませんか?  



◇ 作者(平井孝雄)のコメント

 この雑文は、詰パラ3月号の自作(P12 小学校12)を題材に、会社のOB
会ホームページに、詰将棋の啓蒙も兼ねて出題したものです。
 先ず、@を3月中旬に「頭の体操」として、出題し、解答を3月末、Aとし
て掲出しました。
 詰将棋を初めての人にも取り組んでもらおうと、ヒントと、解題を、ご隠居
さんと八ツアンの掛け合いにしてみました。このスタイルは、囲碁のハメ手読
本、丘目山人の「この手ご用心」(囲碁春秋社 昭31.4刊)をマネしたもので
す。
 Bの<補足>は、OB会には、出していませんが、改作の初心者の参考にな
ればとデッチあげたものです。





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