◇ 新・リレーエッセイ(第2回)

透明駒を楽しもう             馬屋原剛



 長年伝統ルール中心で活動してきた私が、最近夢中になっているものがある。そう、透明
駒だ。
 透明駒のルール自体は「この詰将棋がすごい!2015年度版」の會場氏の素晴らしい論考
「透明駒の現在と可能性」を読んでおおよそは把握していたが、本格的に取り組み始めたの
は去年の4月下旬である。詳しくは覚えていないが、ツイッターのタイムライン上で透明駒
作品が出題されていたので自分も作ってみるか、と思った記憶がある。初めて出来た作品は、
なぜか内視鏡検査中に頭の中で拵えたものだった。透明駒につきものの余詰こそなかったも
のの、のちに類似作があることを知る。
 始めはツイッター上で出題していたのだが、余詰指摘の嵐に嫌気がさし、誰かに見せたい
のを会合まで我慢した。会合でもほとんどの作品は潰されてしまったが、潰されずに良い評
価を受けたものもあり、モチベーションが上がっていった。また、「透明な部屋」というミ
ステリアスなLINEグループが作られ、そこで活発な意見交換をしていくうちにさらに透明駒
熱は加速していった。最近では透明駒と他のフェアリールール(例えば安南やキルケ)を混ぜ
るという危険な試みが行われた。何が危険かというと、透明駒が普通駒になることはあって
も、「普通駒が透明駒になることはない」という常識?が覆ってしまったのである。これ以
上はマニアック過ぎるのでここら辺で話題を変えるが、興味がある向きはぜひグループに参
加したい旨連絡して欲しい。
 透明駒にのめり込んだ理由は大きく4つだろう。一つ目は脳内創作がしやすいからだ。以
前は普通詰将棋でも脳内創作をしていたが、私も気づけば30歳を迎えそろそろ厳しくなって
きた。透明駒は駒数が少なくても作品になるので、こんな私でも作りやすいのだ。二つ目は
新構想が作りやすいからだ。普通詰将棋だと多くの先人達の発見により新構想を見つけるの
はかなり難しい。一方で透明駒であればまだまだ作例が少ないゆえ、少し違うことを考えれ
ばすぐに新構想が生まれる。加えて、透明駒は論理によって手順が成り立つので、その点で
も構想作が作りやすい。三つ目は解いて意見をもらえる仲間がいるからだ。解いてもらって
苦戦している様を眺めるのは楽しいし(悪趣味か)、褒めてもらえばもっと作りたくなる。逆
に厳しい評価をもらっても次は見返してやるぞと息巻き、やはりもっと作りたくなる。四つ
目は余詰指摘が楽しいからだ(悪趣味か)。透明駒は現時点では機械検討できないので、まさ
に作者と解答者の勝負なわけだ。普通詰将棋でも、機械検討ができなかった時代はこうやっ
て楽しんでいたのかなと思いを馳せた。
 透明駒は、そのルールが生まれてから何回かブームと停滞を繰り返しているらしいのだが、
今は大ブームが来ていると思う。その証拠に、昨年12月に詰パラで行われた透明駒作品展に
作品が10作、解答者はなんと38名も集まった。自作も出品しているのでジャッジの結果が楽
しみだ。まだ先の話になるが、来年は「透明駒入門」という本が出版される。私も執筆者の
1人なので、少しでも透明駒人口が増えるように尽力したいと思う。

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