◇ 新・リレーエッセイ(第1回)

双玉作品とその思い出             三角 淳



 更新が長らく休止状態となっていた全詰連ホームページの「リレーエッセイ」
ですが、この度、実に約15年振りに再開されることになったとのこと。その再
開第1回目を執筆させていただくこととなりました。宜しくお付き合いの程、
お願い申し上げます。

 これまでの既発表の自作のうち、「双玉作品」が約一割半を占めています。
他にも様々な分野の作図に手を出しており、別に双玉専門作家という訳ではな
いのですが、通常の単玉とは少し雰囲気の違った面白い手順が表現可能であり、
作品数の割合以上に愛着を感じている分野の一つです。詰工房のグループ作品
集「アトリエ」に参加したときには、自作の選題をすべて双玉作品で揃えたこ
ともありました。双玉というのはその性質上、人によって見方の分かれる分野
でもありますが、筆者が詰将棋に関して物心ついた頃には既に各誌で双玉作品
が普通に掲載されるようになっていたこともあり、ごく自然に双玉の世界に親
しみながら現在に至っています。

 下図は高校生のときに発表した懐かしい初期の双玉作。詰パラの高等学校に
掲載された作品です。(「夢銀河」にも収録。)              

詰パラ1995年8月号                           

    

51飛、52香、65桂、43玉、52飛成、同玉、53桂成、同玉、65王、56と、   
54香、43玉、44歩、同玉、34銀成まで15手詰。

 2手目の香合は間接的に55王に睨みを利かせた応手。その52香を逆用して  
飛香不利交換を行い、44地点での打歩詰を回避します。

 本作は当時創設されたばかりの「打歩詰大賞」の佳作に運良く選ばれ、それ
がきっかけで詰研の例会に呼んでいただきました。個人差はあるかと思います
が、駆け出しの新人にとって会合に初めて足を運ぶことは気持ちの上で若干敷
居の高いもの。後から振り返れば特に気負う必要はなかったのですが、当時は
詰研の錚々たるメンバーを前にそれなりに緊張したものです。しかしその後、
詰工房や全国大会などにも出掛けるようになり、多くの詰キストの方々との交
流が始まる重要な第一歩となったことを思うと、そのきっかけを与えていただ
いた幸運に二十数年経った今でも深く感謝しています。

 下図は比較的最近の双玉作品で、詰四会作品展に発表した一局です。    

詰パラ2015年10月号                          

    

55金、同銀、66歩、同玉、67銀、同玉、64飛、同銀、77金、同玉、     
56王まで11手詰。

 守備駒の64銀をスイッチバックさせ、最終手56王を実現。5手目の時点で 
64飛を急ぐと65角の逆王手があり失敗します。

 今までにそれなりに多くの作品を発表してきましたが、筆者は「課題作」と
いうのがどちらかといえば億劫なタイプで、与えられた課題に沿って短期間で
気の利いた作品を仕上げるという芸当にはあまり向いていないようです。(た
だし、例外として曲詰は除きます。)基本的には気分の乗ったときに自分の興
味のあるものを手掛けたいと思っています。そのため、会合への参加は楽しみ
な一方で作品展用の課題作はプレッシャー、というといささか大袈裟になりま
すが、本作は、詰四会の課題作が「自由課題」だったときに手持ちのストック
の双玉作をそのまま出品したものです。

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