◇平成15年度看寿賞選考結果 短 編; 将世3月号サロン 斎藤夏雄 17手 中 編; 詰パラ8月号大学 相馬康幸 35手 長 賞; 近将8月号力試 添川公司 139手 特別賞; 詰パラ11月号裸展 岡村孝雄 55手 ※図面はこちらで。 看寿賞委員長:柳田明 選考委員:阿部健治 浦野真彦 近藤真一 橋本孝治 福村努 山田修司 【推薦意見】 短 編:斎藤夏雄 浦野委員 4手一組の趣向を一段変えて実現したのはすばらしい。龍を捨てる収束も 申し分なし。 近藤委員 今年、好作を連発された注目の作者。本作もリズム感のある手順を収束ま で無理なく自然に表現している。 橋本委員 短編では斎藤夏雄氏が新人離れした作品群で強烈なデビューを果たした。 中でも馬の翻弄を主題としたこの作品は、氏の出世作として後々まで語り 継がれる作品だと思う。 福村委員 すべての攻方着手が馬に働きかけているという稀少な作ではないか。馬の 働きを無能にするための機能的な連携プレー。 山田委員 手順を追うにつれ、一段ずつシフトして跳躍する馬の動きが大変面白い。 36金打も好手。軽妙な短篇という感じではないが、図巧風濃密型の短篇と して今期はこれを推す。 柳田委員長 馬のスイッチバック2回。5手目28金と上がって詰まないとは何とムシ がいい事よ。 中 編:相馬康幸 阿部委員 手順にも対称性があり、実にスマートにできている。授賞の価値はあると 感じた。 橋本委員 あらかじめ用意されていたもの−「デフォルト」。その名が示す通り、こ の図は詰将棋のルールが考案されたときに、すでに存在していたものだ。 ただ、これは単なる発掘物とは違う。盤や駒の持つ自然な性質を最大限に 引き出した結果、この図に辿り着いたのだと思う。 福村委員 何と言っても初形が素晴らしく、手順も秀逸である。 山田委員 奇跡的な構図。この種の作はおおむね持駒が多く、みただけでうんざりす るのが通例だが、この作はその感じがないのが何より良い。収束手順は既 成だが、意図的に作れるものではないから、見事な「発掘」といえる。 傑作。 柳田委員長 小沢正広作、夏の陣をどうしても思い出すが、実は51玉41金61金だ けでも詰んでいた。収束までキチンと出来ているのが不思議。 長 編:添川公司 浦野委員 龍追い以外で無防備煙という奇跡的な作品。78香は惜しいが、38枚で あったとしても本命に推す。 近藤委員 私を凹ましてくれた(笑)作品。初形条件から言うとやはり78香は気になる。 手順も巧妙ではあるが、添川氏の他の作品と比較するとやや軽いか。 橋本委員 龍追いを使わない無防備煙。まず、その事実に圧倒される。78香の存在は 減価事項だが、それを補って余りある作品。添川氏は龍追いを使わない煙 詰を連発しているが、やはり普通の作家にはない「何か」を会得している としか思えない。 福村委員 無防備煙もさることながら、発想が素晴らしく手順も文句なしである。 山田委員 全体を貫く馬追い手順が新鮮。78香に役を持たせたかった感はあるが、嫌 味な成駒がない清新な構図で、全体に格調高い傑作。 柳田委員長 香1枚が取られるだけ、と作者は正直に言っているが、迷う事は何も無い。 煙詰の歴史を変えた作品。 特別賞:岡村孝雄 阿部委員 条件に対する甘えが皆無の作品。私は基本的に条件作は好きではないが、 これは超絶。推さないわけにはいかない。 浦野委員 昨年の候補作とは段違いの好手順。 近藤委員 本作は詰将棋史に残る傑作。初形条件にもかかわらず、この手順は奇跡的 な発見である。特別賞ではなく正規の場である長編賞を受賞すべきである。 橋本委員 変化多岐に亘る並べ詰めが、(ごくわずかな非限定を除いて)唯一の手順 に収束していくのは、ある種の奇跡を見る思い。裸玉でここまで高品質の 手順を見ることができるとは、時代も変わったものだ。今回は規定通り 04年度の発表図で推薦したが、4手逆算された図の完全性が確認されれば、 そちらの方が究極の裸玉として残るだろう。 山田委員 コンピュータなしには考えられないような裸玉で、持駒が多いのも難だが、 それにしてもスッキリ割り切れた面白い手順であり、よくぞ発見したとい う努力を買う。 柳田委員長 長編に推す気にはどうもならないので、いきなり特別賞1位に。42玉形 だから推敲不足とはこの場合は言えないと思う。 【第1次投票・集計結果】 +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ | |阿浦近橋福山柳| |一般| | 作 者 発表誌 手数 |部野藤本村田田|得点|推薦| +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔短編の部〕(17手以内) | | | | |斎藤夏雄作(将世3月、17手)| ◎○◎◎◎◎|17点|1票| |該当無し |◎ ◎ |6点| | |岡村孝雄作(パラ11月、7手)| ○ ○|4点|3票| |斎藤夏雄作(パラ1月、17手)| △ △ △|3点|4票| |武井尉一作(パラ2月、17手)|○ |2点|2票| |大崎壮太郎作(パラ8月11手)| ○ |2点|1票| |斎藤夏雄作(パラ9月、15手)| ○ |2点|1票| |岡村孝雄作(パラ11月、17手)| ○ |2点|1票| |中村雅哉作(パラ9月、11手)| △ △|2点|1票| |妻木貴雄作(将世11月、15手)| △ △ |2点| | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔中編の部〕(19手〜49手) | | | | |相馬康幸作(パラ8月、35手)|○ ○◎◎◎◎|16点|5票| |鮎川まどか作(パラ3月41手)|◎◎ ○ |8点|4票| |山田修司作(近将4月、31手)| ○△△○ |6点|1票| |小川悦勇作(パラ3月、47手)| △ ○○|5点|2票| |該当無し | ◎ |3点| | |山田康一作(パラ1月、29手)| △ |1点|2票| |角 建逸作(近将7月、27手)| △ |1点|1票| |きしはじめ作(パラ10月25手)| △|1点|1票| +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔長編の部〕(51手以上) | | | | |添川公司作(近将8月 139手)|△◎○◎◎◎◎|18点|5票| |岡村孝雄作(パラ11月、55手)|◎ ◎◎ |9点|3票| |斎藤仁士作(パラ8月 119手)| ○ ○△|5点|1票| |伊田勇一作(パラ9月、81手)| △ ○|3点|4票| |添川公司作(近将12月 111手)|△△ |2点| | |篠原 昇作(パラ5月、57手)| ○ |2点|5票| |該当無し | △ |1点| | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔特別賞の部〕 | | | | |岡村孝雄作(パラ11月、55手)| ◎ ◎◎|9点|(3) | |篠原 昇作(パラ5月、57手)| △ ◎ ○|6点|(5) | |相馬康幸作(パラ8月、35手)| ○ |2点|(5) | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ 【第2次投票・集計結果】 +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ | |阿浦近橋福柳山| | | | 作 者 発表誌 手数 |部野藤本村田田|得票| | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔短編の部〕(17手以内) | | | | |斎藤夏雄作(将世3月、17手)|◎◎◎◎◎◎◎|7票|受賞| +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔中編の部〕(19手〜49手) | | | | |相馬康幸作(パラ8月、35手)| ◎ ◎◎◎◎|5票|受賞| |鮎川まどか作(パラ3月41手)|◎ |1票| | |該当無し | ◎ |1票| | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔長編の部〕(51手以上) | | | | |添川公司作(近将8月 139手)| ◎◎◎◎◎◎|6票|受賞| |岡村孝雄作(パラ11月、55手)|◎ ◎◎ |3票| | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ |〔特別賞の部〕 | | | | |岡村孝雄作(パラ11月、55手)| ◎ ◎◎|3票|受賞| |該当無し | ◎ ◎ |2票| | +−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−+−−+−−+ 岡村作は長編賞で3票、特別賞で3票を得ております。長編への 投票のうちで、阿部・橋本委員両委員は「長編賞へ選ばれなかった 場合、特別賞の方へ票を振り替える」という意思表示があり、この 分を合算しまして特別賞で受賞となりました。(柳田) |