No124 角建逸『風鈴』 47手 詰パラ2002年11月


64歩、53玉、63歩成、同玉、44歩、45桂、同角、同銀、53角成、同玉、
57飛、56歩、43歩成、63玉、75桂、同と、64歩、54玉、65金直、同と、
63歩成、同玉、75桂、同と、67飛、66桂、同飛、65桂、同飛、同と、
75桂、同と、67香、66桂、同香、65桂、同香、同と、75桂、同と、
64香、54玉、66桂、同と、63香成、同玉、75桂、まで47手

本作は作意での玉の移動箇所はわずかに三ヶ所しかない。しかしながら、手数
は47手もかかる。限られた空間で細やかな手順を展開する。それはミニチュア、
箱庭的で、詰将棋版ドールハウスと言えるだろう。

【解図】
64歩、(イ)53玉、63歩成、同玉、44歩、45桂、(A図)
(イ)54玉は65金直、53玉、63歩成、同玉、74龍、52玉、54香、41玉、14角、
  32合、33桂まで
     (A図)


53歩を消去する。変化(イ)で判るようにこの消去には36角が必要で、後からは
出来ない。44歩で合駒を問えば、桂合である。
同角、同銀、53角成、(B図)
     (B図)


歩を消したので角を成捨てる事ができた。次は飛車の出番だ。
同玉、57飛、(ロ)56歩、(C図)
(ロ)55歩は43歩成、63玉、75桂、同と、64歩、54玉、55金、同銀、63歩成、
  同玉、66香、64桂、同香、54玉、66桂、同と、63香成、同玉、75桂まで
(ロ)同銀成は43歩成、63玉、55桂、同と、75桂まで
     (C図)


57飛は取る事ができない。変化(ロ)の最終手75桂で判るようにこの玉を囲いの
中で詰めるにはこの桂で仕留める形しかない。
43歩成、63玉、75桂、同と、64歩、54玉、65金直、(D図)
     (D図)


自然に43歩成だが、桂成では詰まない。その意味は後でならない(変化ニ)と
判明しない。飛車の王手を邪魔している66金を消去する。
同と、63歩成、(ハ)同玉、75桂、同と、67飛、(E図)
(ハ)64桂は65金、同玉、64龍、76玉、67龍、85玉、97桂、84玉、85香、95玉、
  96歩、86玉、78桂、96玉、87龍、95玉、96香まで
     (E図)


と金を移動させ、飛車で王手をする。途中、変化(ハ)が少し面倒である。
(ニ)66桂、同飛、65桂、(F図)
(ニ)65桂は64香、54玉、65金、同と、63香成、55玉、44龍まで
     (F図)


桂の二段合である。結果、飛車は桂2枚と交換になる。
同飛、同と、75桂、同と、67香、66桂、同香、65桂、(G図)
     (G図)


続いて、持駒の香も桂と交換する。変化は飛車とほぼ同じである。
同香、同と、75桂、同と、64香、54玉、66桂、(H図)
     (H図)


ようやく、と金を66まで呼び出す局面になった。
同と、63香成、同玉、75桂まで
    詰上がり


75桂まで当初のもくろみをようやく達成できた。なお、命名は玉とと金の動き
を風になびく風鈴に見立てたものだそうです。

訂正;「『風鈴』はこの詰上がりの形から名付けられたそうである。」と当初
  は解説しましたが、これは解説者の思い違いでした。作者から指摘があり、
  訂正しました。作者にご迷惑をかけた事をお詫びいたします。(近藤)

【作者:受賞時コメント】
 いつもどおり偶然に現れた桂の二段合、それにうまく序奏や伏線が入り、一
つの物語に仕上がった手応えはありましたが、受賞の報に接して今もまだ夢の
ような感じがしています。
 正直なところ、初入選から25年目にして初めて看寿賞の有力候補となるよう
な作品が発表できたことにかなり満足しておりましたから。
 また、今回は「黄金の七人」と言うべき選考委員会による決定ですので、大変
名誉に感じております。
 続けていれば叶う事もある。そう信じてまたコツコツやっていきたいと思い
ます。ありがとうございました。

                       【解説:近藤真一】

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