No116 波崎黒生『ルートファインディング』47手 詰パラ2000年1月


66銀、同玉、69香、68歩、同香、同桂成、58桂、同成桂、67歩、77玉、
95馬、67玉、94馬、85歩、12馬、45と、85馬、66玉、67歩、77玉、
22馬、44と、95馬、67玉、94馬、85歩、23馬、45と、85馬、66玉、
67歩、77玉、86馬、同玉、84龍、85金、同龍、同玉、41馬、52歩、
同馬、同銀、86歩、同玉、87歩、85玉、95金、まで47手

本作はパズルである。二枚の馬を操り、局面を微妙に変化させる。その中で
収束に向かうキーを設定した作品だ。変化読みの難解作、軽快な趣向とは
違った味わい、面白さがある。作者はこういった作品を得意として、
パズル的な一連の作品群は独特の世界を構築している。

【解図】
初手66銀と捨て、同玉、69香とする。(図面A)
      図面A


香をとれないので、歩合をする。
 67歩は78桂、77玉、95馬まで
 同飛成は75馬、同玉、74龍、66玉、76龍、55玉、47桂、45玉、12馬以下。

68歩、同香、同桂成、58桂、同成桂、67歩、77玉(図面B)と進む。
      図面B


ここまでが序で舞台の設定は終えた。ここからが解者に与えられた問題である。
どうやって一歩を獲得するか、それが解者に投げかけられる謎である。
図面Bの持駒が2歩ならば、86馬、同玉、84龍、85金、同龍、同玉、86歩、
同玉、87歩、85玉、95金までと、作意収束に入り、詰みが成立する。あと1歩
が欲しい局面なのだ。一見すると、44馬とし、一歩が稼げば終わりのようであ
る。しかし、44馬を同飛成とされるとこの龍の効きが生きてきて、詰方は84龍
とはできず、詰まない。玉方のと金を取る場所は注意が必要だし、玉方も詰方
に安易に一歩は渡せない。

さて、どうするのか、95馬、67玉、94馬と馬を遠ざけてみる。すると85歩の中
合が必要となる。この中合を同馬とすれば、66玉とされ67歩ぐらいしかないの
で、元の局面に還元してしまう。そこで、12馬とする。(図面C)
      図面C


12馬の応手はと金の移動合が正解だ。(図面D)
 45歩合は85馬、66玉、75馬、同玉、74龍、66玉、76龍、55玉、56歩、同と、
   同龍まで。この順は44とが退路を防いでいる事に注意。
 34歩合は同馬、同と、85馬、66玉、67歩、77玉、86馬、同玉、84龍、85金、
   同龍、同玉、86歩以下。この順は作意収束と同様。
      図面D


移動したと金を馬では取れない。取れば同飛成、85馬、66玉、67歩、同とで
56龍ができず不詰となる。(図面E)
      図面E


と金は取れないから、85歩を94馬で取って進めてみよう。
85馬、66玉、67歩、77玉(図面F)
      図面F


さらに22馬とする。玉方は歩合はできないので、また、44とと移動合である。
4筋から9筋は局面が還元してしまった。しかし、1筋から3筋は少し違って
いる。要するに持駒の増減がなく、馬鋸が出来たのである。(図面G)
      図面G


二枚の馬を駆使すれば、持駒を消費せずに局面を微妙に変える事ができる事は
わかった。さて、詰みに向かうキーの一歩獲得はどうすれば可能なのだろうか。
それは、馬のルートを見付ければ解決する。その答えは23馬から41馬で
ある。41馬と王手をすれば一歩を獲得できるのだ。
95馬、67玉、94馬、85歩、23馬(図面H)
      図面H


45と、85馬、66玉、67歩、77玉、86馬、同玉、84龍、85金、同龍、 
同玉、41馬、52歩、(図面I)
初形では11にいた馬がついに41までたどり着いた。
      図面I


同馬、同銀、86歩、同玉、87歩、85玉、95金まで
      詰上がり


【作者:受賞のコメント】
パラの会員になった頃、看寿賞の記事を読んで、もし万一オイラが受賞できる
とするとこれ(本作の仕掛けの部分だけ)だな、と思ったものです。あれから何
年がたったのか……。
 本作は手順前後の解消→収束作り→序奏作り、の順番でそれぞれタップリと
苦しみました。そして試行錯誤を重ねているうちに、それまで全くダメだった
作図力と検討力が少しずつ人並みに近づいて行ったような気がします。当時の
力では完成は絶望的でしたが、続けていれば何とかなるものなのですね。
この受賞は心から喜んでいます。有り難うございました。


      【解説:近藤真一】

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