No115 伊田勇一 17手 詰将棋パラダイス2000年10月


本作は重厚な作品である。短編ではあるが、その変化、紛れは圧倒的で、古典
の三代宗看を彷彿させる。作意は気持ちよい手順であるが、それに到達するま
では変化、紛れの海をさまよう事になろう。

【解図】
初手に44銀は45玉、55飛、36玉で2枚の香が良く効いていて詰まない。まず、
15龍と打診してみよう。(図面A)
      図面A


歩合は44銀、同玉、54飛、45玉、44金、36玉、27金、35玉、26金まで
桂、銀、金、の合も同様に詰む。ここは27金を打たせないようにする合駒が必
要だ。正解は25香上と24香を移動する。25香合だと次の24龍で取られてしまう
ので、それを避けたのである。最も、この移動合は詰ましてから再検討した時
に気がつく事の方が多いだろう。(図面B)
      図面B


3手目は
24龍!!他にいろいろ着手が目に写るのだが、その中で一番やりづら
い手である。(図面C)
同玉は14飛a同玉、23銀、15玉、16金、24玉、34金、同香、同銀成、14玉、
15香まで。
a35玉は38香、37歩、36金、同馬、44銀、45玉、55金まで。
      図面C


45玉には65飛と馬筋に打つ。玉を潜らせないためにはこの位置が最善である。
また、合駒を考えなくてはならない。(図面D)
      図面D


桂合を考えてみる。54銀とし、36玉は27金以下なので56玉である。
56玉の局面を見てみよう。(図面E)
      図面E


取り逃がしたかに思える局面だ。次の手段で入玉を防ぐしかない。
67金、同桂成、55飛、同玉、(図面F)
      図面F


図面Fで44龍の手が見えるだろう。勿論その前には57香、同馬の工作が必要に
なる。57香、同馬、44龍、同玉、45金まで17手。
      詰上がり


逆戻って55桂以外の合駒は、作意順と同様にして、同手数駒余りになる。
ここは駒を余らせない桂合(67金に同桂成とできる)が正解である。

手順再掲:15龍、25香上、24龍、45玉、65飛、55桂、54銀、56玉、
67金、同桂成、55飛、同玉、57香、同馬、44龍、同玉、45金まで17手


なお、43歩、79とはいずれも余詰防ぎの配置である。

【作者:受賞のコメント】
「看寿賞作品集」、名匠の入魂の作品群を鑑賞する度に、心躍り感動が沸き起こ
ります。入選することだけを目標としてきた私にとって、看寿賞とは天空で繰
り広げられる星達の絵巻に似て、夢見ることはあっても届くことのない世界だ
と思っていました。そこに舞い込んだ受賞通知、天にも昇る気分とは正にこの
ことです。きっと、解答者をはじめ皆様の思いが、時空空間を突き破ってくれ
たのでしょう。本当にありがとうございます。喜びとともに、拙作が最高の賞
に値するやとの不安もよぎります。さらに精進あるのみです。


      【解説:近藤真一】

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