No114 加藤徹 97手 詰将棋パラダイス1999年12月 大道棋


 本作は大道棋としての発表であった。詰むか、詰まないかの勝負が大道棋で
収束の乱れや、駒余り等は不問としている。本作も作意で駒は余るが、その点
は普通の詰将棋とは異なる扱いであるので、了承願いたい。大道棋では持駒で
分類するのが慣例である。本作は銀4問題と言われている。
 初手の誘い手として82銀、94銀があるがすぐ切れてしまう。誘われる感もあ
るが、83角を銀で取るしかない。
初手から84銀、94玉、83銀不成、95玉、77角、86歩、(図面A)
     図面A


ここで92飛成が出来れば、75飛以下詰むのだが、自分の歩が邪魔している。
74飛車を94、95と逆から攻める。

94飛、85玉、95飛、76玉、75飛引成、67玉、65龍、58玉、(図面B)
変化で87玉は86龍、78玉、88龍、67玉、65飛、57玉、48銀、46玉、86龍、56歩、68角、
    36玉、56龍、27玉、25飛、18玉、16龍以下。
変化で77玉は75飛、87玉、67龍、88玉、78龍、99玉、88銀、98玉、87銀、以下。
     図面B


75に龍を作り、銀も持駒にした。しかし、図面Bでは諦めてしまうのが普通だ。
単騎の玉とはいえ、この入玉の玉が捕まるのだろうか。
良くも悪くも龍、飛車で追いかける事になる。
68龍、47玉、38銀、36玉、66龍、46歩、37歩、26玉、46龍、17玉、15飛、28玉、
26龍、38玉、18飛、47玉、36龍、57玉、(図面C)
     図面C


『あれ、58歩で詰みか?』と思いきや、五筋は二歩禁であった。
68角、67玉、47龍、76玉、16飛、(図面D)
     図面D


図面Dの応手が問題である。まず、66歩であるが、次の通り。
 77龍、65玉、66飛、54玉、74龍、45玉、46飛、55玉、44龍、65玉、74銀不成、75玉、
 86角、84玉、73銀不成、同玉、76飛、83玉、74龍、92玉、93歩、同玉、75角、
 82玉、64角、92玉、94龍、81玉、91角成、まで
85玉は次の通り。
45龍、84玉、86飛、73玉、74歩、63玉、66飛、64歩、同飛、52玉、
 53歩、同玉、54飛、62玉、42龍、63玉、53龍、まで
85玉には86飛と行く一手と思っていると45龍は気付きづらい。それで、66歩と応手を間違
えた解答もあったそうだ。正解は46歩。この一手でまだまだ、迷路はつづく。

46歩、同飛、85玉、86飛、75玉、77龍、64玉、74龍、55玉、46角、45玉、65龍、(図面E)
     図面E


作意は44玉だが、34玉も厄介だ。以下の変化は次の通り。
 35龍、43玉、44歩、42玉、64角a53桂、同角成、同玉、43歩成、同玉、
 46飛、52玉、53歩、63玉、65龍、53玉、55龍、54金、65桂、62玉、
 42飛成、52歩、同龍、同玉、54龍、42玉、53龍、32玉、33金、21玉、22歩、
 11玉、12歩、同玉、23金、11玉、51龍、まで
 a53歩は、43歩成、同玉、46飛、52玉、62香成、同玉、42飛成、
      52香、72銀成、同玉、75龍、61玉、62歩、同玉、73角成、以下。
これ以外のも詰まし方はあるが、いずれも30数手もかかる。
さて、44玉には84飛としたいが、43玉、45龍、32玉で33歩は二歩禁で打てない。
34飛ぐらいだが、33歩で詰みはない。他に適当な手も見あたらないのだが……。
やりづらいが55角(図面F)とする。
     図面F


43玉、46飛、34玉、36飛、35歩、(図面G)
     図面G


3筋へ逃げられて、合駒をされた。ついに手が切れたと感じる局面だ。
しかし、
33角成(図面H)が英断の一手!!
     図面H


飛、龍だけで不安になるが、持駒歩の威力もあって追いつめていく事ができる。
同玉、35龍、43玉、34龍、52玉、53歩、63玉、66飛、53玉、56飛、42玉、44龍、
43金で(図面I)
     図面I


43金合は分かり易い。歩合は53飛成、31玉、33龍以下。
53飛成、31玉、51龍、22玉、23歩、同玉、43龍、(図面J)
     図面J


43龍に対しての合駒が少し面倒だがここまでくれば、何とかなるだろう。
33歩(香、銀、金)は34金、14玉、11龍、13歩、同龍、同玉、33龍、以下。
33桂は34金、14玉、11龍、25玉、22龍、15玉、16歩、同玉、46龍、以下。
33角のみ11龍が成立せず、次の作意となる。
33角、21龍、22角打、(図面K)
     図面K


同龍、同玉、13角、11玉、12歩、同玉、32龍、13玉、33龍、14玉、36角、25歩、
24金、15玉、25金、16玉、13龍、まで97手
     詰上がり


22角打の所は厳密には割り切れていない。
22歩は34金、14玉、12龍、13歩、同龍、同玉、33龍、23桂、46角、12玉、
 23金、同歩、13歩、21玉、22歩、11玉、31龍まで(他に同手数の詰みあり)
22香は同龍、同玉、13金、同玉、33龍、14玉、16香、15歩、23角、25玉、
 36龍、24玉、34龍、13玉、15香、22玉、12香成まで(他に同手数の詰みあり)
これは前に述べたように大道棋と言う事で了解願いたい。

この作品が詰むと言われれば、何とかここまで詰みを見付ける事が出来るかも
知れない。それでも、途中の局面は幾度となく、不詰の漂う不安な局面ばかり
だった。普通の人なら14手目58玉で投げ出すだろう。
氏の大道棋には好作、力作が多いが、それらの中でも本作は傑出した作品であ
ろう。歴史に残る作品である。最後に作者による本作の類型を紹介しよう。
  加藤徹 47手 詰パラ1972.11


      【解説:近藤真一】

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