No111 相馬康幸 25手 詰将棋パラダイス1999年12月



39香、22玉、44馬、33銀、34桂、12玉、13香、同桂、24桂、同歩、
22桂成、同銀、同馬、同玉、23香、同玉、32銀、12玉、23銀打、11玉、
21銀成、同玉、32香成、11玉、22成香、まで25手

 実際の対局で表れたとしても不思議でない自然な実戦形の初形だ。39香と
一番遠い地点から、王手をしたくなる形だ。香打ちに対しての34歩
をまず、考えてみよう。(図面A)
      図面A


同香として22玉は33銀a12玉、21馬、同玉、22歩、11玉、13香、12歩、
同香成、同玉、13歩、同玉、25桂、12玉、13香までで詰む。
a同桂は同馬、21玉、22歩、11玉、13香、以下。
 桂は品切れで歩合が強要されることに注意して欲しい。この手順では香の位置
は関係しない。手順中で合駒の歩を使用していることから、これ以上、玉方に
駒を渡せないこともわかる。すなわち、中合は効かないのだ。33歩合も42銀、
22玉、33銀生、とすれば、34歩合と同じことになる。結果、39香には合駒は出
来ず、22玉となることが確定した。

 次の44馬に対して、33歩合は次の通り詰む。(図面B)
 34桂で12玉なら13香、同玉、22銀、12玉、13香、同桂、11銀成、同玉、
   33馬、12玉、22馬まで
 34桂で32玉なら54馬、43金、44桂、41玉、32銀、51玉、52桂成、同玉、
   43銀成、62玉、63金、61玉、62銀まで
また、44馬に対して、33角合は次の通り詰む。(図面C)
 同香成、同桂、34桂、12玉、13香、21玉、22香、32玉、21角、41玉、
   42銀まで
33に飛車、金合は角合同様に同香成と合駒を入手し詰む。
      図面B             図面C


さて、合駒は33銀合に決まった。(図面D)
      図面D


34桂、12玉、13香、同桂、と手は続く。
12玉で32玉なら42桂成、22玉、33香成、同桂、34桂、12玉、21銀、13玉、
35馬、24歩、22銀、23玉、32銀不成、12玉、13香まで。
同桂で同玉の変化は次の通り。
25桂、24玉、35馬、15玉、16銀、同玉、18香、(図面E)17歩、同馬、
15玉、16歩、25玉、35馬まで。
      図面E


図面Eをみれば、初手の香が39香でなければならないのは明らかだ。

9手目に24桂とする。(図面F)
      図面F


 ここからの手順は一連の流れで変化の説明のようもないだろう。流れるように
局面はおさまり、清涼詰で詰上がる。

同歩、22桂成、同銀、同馬、同玉、23香、同玉、32銀、12玉、23銀打、11玉、
21銀成、同玉、32香成、11玉、22成香 まで25手

      詰上がり


 好形実戦形に狙いすました初手最遠打。以下の手順も軽い合駒を含み、
申し分ない。ある意味、詰将棋の理想を実現したといっても言い過ぎではない。
このような傑作の誕生は発見的で偶発的に受け取らえられてしまいがちだ。
しかし、それは作者の感性のたまものである事は間違いない。

【作者:受賞コメント】
私の場合、詰将棋は作るものでも見付けるものでもありません。詰将棋は捕ま
えるものだと思っています。「ヒロエ」や、「迷路」そして本作などは、脳裏に浮
かんだ映像を瞬間的に捕まえた作品であるため、完成に至るまでの足跡が作品
の中に残っていません。つまり、どうやって出来たのかが推察しにくい作品な
ので、奇跡的だと錯覚してくれるのかも知れません。

      【解説:近藤真一】

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