No109 短編:小林敏樹  13手 詰パラ1999年6月


 
【解図】
初手を考えてみる。35銀は37に潜られてどうしようもない。
まずは49香打ちである。47合なら37銀打、同桂成、35銀、36玉、26金、
45玉、12馬までで詰む。
有望そうであるが、36玉(図面1)とされると手段が見つからない。27からの
脱出が防げないのだ。
       図面1


戻って、余り有力とは思えないが、37銀打としてみる。同桂成なら35銀と
して簡単だ。(図面2)従って、同飛成である。(図面3)
        図面2           図面3


次に49香とする。退路を塞ぐためにこの局面では当然の着手だろう。
さて、36玉の応手はどうか。37銀、同玉、27飛、同玉、22飛成、16玉
27金までと飛車を活用しぴったりと詰む。(図面4)
       図面4


48歩は35銀、47玉、65馬、36玉、26金打、同龍、同金、37玉、38馬まで
で詰むし、47歩も同様に簡単だ。

残された玉方の応手は……。





ここは
48龍(図面5)と大事な龍を差し出すしか玉方の手段はない。
       図面5


37への逃げ道を作るともに37銀からの当たりを避けているわけである。
同香と龍を召し上げる。それに47合では37銀打、同桂成、35銀、で
簡単だから36玉である。(図面6)
       図面6


37銀打、同飛成、49香、48龍、同香、36玉、迄きた。

実は後7手で詰むが、ここからが問題だ。この局面をじっと眺めてみよう。
詰み筋が2つほど見えてこないだろうか。一つは37金、同桂成、54馬、と
する手順。もう一つは、32飛成から38龍とする手順だ。いずれも、玉方
65馬が頑張っていて成立しない。しかし、どちらか一方の手順で馬を
無力化すると片方が生きてきて詰ます事ができるのだ。



ならば、次の手順は一気にひらめいたであろう。
32飛成!!(図面7)同馬、33飛!!(図面8)同馬、で馬の斜め筋をずらした。
       図面7            図面8


これで、21馬が自由になり、馬を活用した詰みになる。
37金、同桂成、54馬、まで13手(図面9)
       図面9





【解説】
本作の最後の飛車捨ての源流は図巧62番にある。(下記、参照)
     図巧62番


手順;17金、同馬、19銀打、29玉、18銀打、同馬、同銀、28玉、22飛、同馬、
23飛、同馬、73角、18玉、19銀、17玉、62角成、27玉、26馬、38玉、
37馬、29玉、28馬まで23手

本作は図巧62番を現代風にアレンジした短編とも言える。
ともあれ、その手順構成は完璧で非の打ち所はない。調べれば、調べるほど
配置の必然性に気がつくだろう。手順構成、配置に対しての作者の気配り、
推敲の高さは発表作すべてに言えるのだが、作者にとっても本作は十分に
満足できる作品であろう。詰パラB級順位戦では他を圧倒するダントツの
支持をえて、昇級をした。看寿賞受賞も当然の結果であろう。

    【再掲】


37銀打、同飛成、49香、48龍、同香、36玉、32飛成、同馬、
33飛、同馬、37金、同桂成、54馬、まで13手

【作者:受賞のコメント】
 仕上がりが重いので、看寿賞に値する作品とはとても思えない作品で、作者
として少々恥ずかしい思いです。
 創作の動機は飛車を連続で捨てる部分で、創棋会作品集「あさぎり」第8番の
田宮克哉氏作から着想を得ました(古いですね)。収束7手はすぐ出来て、あと
は香打ちを入れて完成!となるはずだったのですが、これがどうにも旨くいか
ず長いこと寝かせてありました。最近になって38歩を置く可能性を思いついて
試してみたら、龍移動合入りで出来てしまったのでした。
 この世に出るまで長かった本作に「がんばってよかったね」と言ってあげたい
気持ちです。

      【解説:近藤真一】

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